索道メーカー別高速チェアリフト史(日本ケーブル編③)

索道レポート

2026/9/13
索道メーカー別高速チェアリフト史(日本ケーブル編③)


ハイライト

索道メーカー別に高速チェアリフト史をまとめます。(日本ケーブル編③)
【取上げる年代】1987~1993

[目次]
1.多様な高速リフトの登場▼
フード付きクワッドリフトの登場
フード付きクワッドリフトの導入路線紹介
2.2人乗り高速リフトの登場▼
3.コンパクト停留所ETタイプ▼
4.屋内スキー場用クワッド▼

現在多くのスキー場で活躍する高速リフト(=デタッチャブルリフト=自動循環式)ですが,意外と深堀してまとめられているものは少なく資料もほぼないのが現状です。そんな高速リフトというマニアックな世界の歴史をまとめるのがこの記事の目的です。
記事は,ちまちま気まぐれで書き上げていこうと考えています。
今回は日本ケーブル編③(1987~1993)です。
※注意:記事は事実を記載しているつもりですが,一部筆者の考察・推測も含まれています。

1. 多様な高速リフトの登場

1987年~1988年
フード付きクワッドリフトの登場
北国や標高の高いスキー場では,雪や雨を防ぎ,快適に乗車できるフード付きリフトが多く見られます。
そんなフード付き付きリフトが国内で初めて登場したのは1987年になります。初めて建設されたフード付きリフトは,東京索道が建設した裏磐梯猫魔「雄国第1A線トリプル(フライングキャットトリプル)」と,菅平「奥ダボス第1トリプル」です。両リフトは1986年に運行を開始しましたが,当初はフード付き認可がされておらず,フードがありませんでしたが,翌1987年にフード付きリフトが認可された直後に搬器を交換しフード化されました。1986年の菅平スキー場の広告では,フードが付く前の奥ダボス第1トリプルが確認できます。

▲図1 1986年の菅平高原広告

▲図1 ネコママウンテン フライングキャットトリプル

1988年になると,フード付きリフトはクワッドを中心に本格的に普及していきます。この年には全国で16基ものフード付きリフトが建設され,なかでも日本ケーブルは各地のスキー場に実に11基ものフード付きクワッドを建設しました。

【1988年に建設されたフード付きリフト】
■北海道/糠平温泉/第1高速
■北海道/糠平高原/第3高速(休止)
■北海道/富良野/ダウンヒル第1高速
■北海道/深川/第1高速(廃止)
■北海道/深川/第2高速(廃止)
■岩手/安比高原/ビスタクワッド
■山形/蔵王温泉/温泉第4クワッド
■山形/サンマリーナ玉庭/ダリア第1クワッド(廃止)
■長野/コルチナ国際/第5クワッド(フード撤去)
■長野/乗鞍高原/鳥居尾根クワッド(休止)
■長野/苗場スキー場/第2高速(廃止)

フード付きクワッドリフトの導入路線紹介
フード付きクワッド登場から30年以上経過した現在では,路線ごと撤去されているもの,フードが撤去された路線も存在します。
■糠平温泉/第1高速
第1~3高速リフトが1988年に同時建設されましたが,現在は第1高速のみ運行中です。


■富良野/ダウンヒル第1高速
1,900m級のかなり長いリフトです。


■安比高原/ビスタクワッド
1988年に建設されたフード付きクワッドで最も大掛かりな施設です。ビスタクワッドの設備は,傾斜長1,988m,高低差513m,原動機出力750kWとチェアリフトで国内最大でした。ちなみに,ビスタクワッドという名称は,日本ケーブルの自動循環式フード付き4人乗りチェアリフトの商品名デタッチャブルビスタクワッドより来ています。




■蔵王温泉/温泉第4クワッド
蔵王温泉で初めて建設された高速リフトです。



■コルチナ/第5クワッド
建設当初はフード付きでしたが,現在はフードが撤去されています。

▲1993年コースマップより

■乗鞍高原/鳥居尾根クワッド【休止中】
建設当初はフード付きでしたが,後にフードが撤去され現在は休止中です。(旧称:乗鞍第6クワッド)

▲1993年コースマップより

■苗場/第2高速【廃止】
フード認可前の1986年に運行開始されたリフトで,フード認可が下りた1988年フード付き改造されました。2018年ごろより再びフードが撤去され,大会専用として運行していましたが2021年頃に撤去されています。
▲日本ケーブル広告より

2. 2人乗り高速リフトの登場

1988年
1987年,安全索道が野沢温泉スキー場に国内初となる2人乗り高速リフトを建設しました。
翌1988年には,日本ケーブルも追うように石打丸山と五竜に2人乗り高速リフトを建設しています。
海外ではあまり見かけない2人乗り高速リフトですが,日本では4人乗りの座席に見ず知らずの人と一緒に乗ることをためらったり,仲間同士で乗りたがったりする傾向があり,4人乗りでは乗車効率が悪くなるケースもあったようです。こうした背景もあり,1980年代後半には2人乗り高速リフトが徐々に普及していきました。

▲図3 白馬五竜いいもり第1高速ペア
 

▲図4 白馬五竜いいもり第1高速ペア

3. コンパクト停留所ETタイプ

1990年
索道の停留所には,機械を建屋内に収める「建屋式」と,機械をカバーで覆う「機械カバー式」がありました。そして1990年になると,この機械カバー式を進化させた,スタイリッシュな停留所「ETタイプ」が登場します。このタイプはダイナランドなど,現在でも多くのスキー場で見かけることができ,皆さんも一度は見たことがある形ではないでしょうか。原動緊張装置を覆うカバーも,それまでの武骨なデザインから一転,まるで宇宙船を思わせるような曲線的で未来的なデザインになっています。
従来の機械カバー式は,上部のみを覆う構造だったため,強風雨や吹雪の際には運行機械が十分に保護されず,運転阻害や保守性の低下が課題となっていました。その課題を改善すべく登場したのがETタイプで,停留場の運行機械を丸ごとカバーすることで,悪天候から機械を保護し,より安定した搬器運行を実現するために改良されています。

▲図5 機械カバー式(苗場第5高速)

▲図6 ETタイプ_緊張(苗場第8高速)

このETタイプの初号機は,宮城県泉市と日本ケーブルとの第3セクターにより建設された,スプリングバレー泉高原「クリッパーエクスプレス」に導入されました。このリフトは,ETタイプのほか,支柱が鋼板方錐支柱より鋼管円筒支柱となり先進的な路線であったことが伺えます。
▲図7 原動緊張装置(クリッパーエクスプレス)

▲図8 原動緊張装置(クリッパーエクスプレス)
 
▲図9 原動緊張装置(クリッパーエクスプレス)

▲図10 終端(クリッパーエクスプレス)

▲図10 終端(クリッパーエクスプレス)

ETタイプでは,搬器を場内で回送する押送装置が,従来の爪式ではなくゴムタイヤ式となったのも特徴です。下図の上部に並んでいるゴムタイヤが確認できます。
▲図11 八幡平パノラマ(パノラマクワッド)

▲図12 川場(クリスタルエクスプレス)

4. 屋内スキー場用クワッド

1993年
1993年7月に,当時世界最大の屋内スキー場であった”ららぽーとスキードームSSAWS”が千葉県船橋市に誕生しました。SSAWSは,全長490m,最大幅100,高低差80m,最大斜度20°というスペックで,ゲレンデ両サイドには高速クワッドリフト2本(各431m)が建設されました。室内スキー場という限られたスペースを活かすために,下図のように下りと上りの相互に高低を設けることにより線路幅を小さくしていました。

▲図13 屋内スキー場クワッドイメージ図

5. 参考文献

(1)平成9年度鉄道要覧,運輸省鉄道局,電気車研究会・鉄道図書刊行会,平成9年9月10日
(2)日本ケーブル50年史,日本ケーブル社史編集事務局,日本ケーブル,2003年9月
(3)屋内スキー施設用自動循環式索道のターミナル,日本ケーブル,特開平3-262767,1991-11-22