雫石盛衰の象徴「雫石ゴンドラ」を追う②

索道レポート

2026/5/30
雫石 盛衰の象徴「雫石ゴンドラ」を追う②
第2回:現地レポート ― ゴンドラと現在の雫石スキー場


ハイライト

雫石スキー場に眠る休止中ゴンドラを2回に分けてレポートします。

第1回:コースマップから読み解く雫石スキー場の盛衰史
第2回:現地レポート ― ゴンドラと現在の雫石スキー場

[目次]
1.はじめに▼
2.第1ゴンドラ▼
3.第2ゴンドラ▼
4.その他の廃リフト▼
5.おわりに▼

1. はじめに

第1回の記事では,雫石スキー場の歴代コースマップをもとに,その変遷やかつての姿を振り返りました。
第2回となる今回は,現在も雫石に残されている旧ゴンドラ設備に注目し,現地で撮影した写真を交えながら,その現況を追っていきたいと思います。かつてスキー場の大動脈として活躍したゴンドラが,現在どのような姿を残しているのか,実際に現地を歩きながら見ていきます。

盛岡市内の小高い丘に登ると,岩手山とともに高倉山の姿を一望することができます。手前に広がる盛岡市街と見比べることで,雫石スキー場がいかに広大なスケールを持つスキー場であるかを実感できます。

2. 第1ゴンドラ

■仕様
第1ゴンドラは,東京索道製6人乗りゴンドラの初号機として建設されました。東京索道製の6人乗りゴンドラは,その後も各地へ導入され,現在でも富良野/七飯/尾瀬岩鞍などで運行されています。また,国土計画(現・西武プリンスホテル系スキー場)においても,6人乗りゴンドラの導入は雫石第1ゴンドラが最初であり,あの苗場第1ゴンドラよりも早い時期に登場した設備でした。

初号機とはいえ,そのスケールは非常に大きく,路線長は実に3,531mにも及びます。ドラゴンドラが登場するまでは,中間駅を持たないゴンドラとして国内最長の路線を誇っていました。さらに高低差は849mにも達し,ロープウェイを除く一般的なゴンドラとしては国内最大級の規模を誇っていました。ゴンドラ山頂駅から山麓まで一気に滑り降りることができる滑走距離・標高差という点でも,日本屈指のスケールを持つ索道だったと言えます。

■山麓駅
山麓駅は,特徴的な薄緑色を基調としたデザインとなっています。この色使いや建物の意匠は,当時の国土計画らしさを感じさせるもので,雫石ゴンドラ登場以前に建設されたゴンドラ,たとえばニセコ東山や富良野ゴンドラ(現・ロープウェイ)などでも,ほぼ共通したデザインが採用されていました。
当時の西武グループ系スキー場では,「どのスキー場へ行っても同じ世界観を感じられること」が重視されており,索道駅舎やホテル,サイン類に至るまで統一感のある設計が徹底されていました。こうしたデザインの統一性も,西武グループのブランド力を支える大きな要素だったのだと思います。
現在,山麓駅の建物はゴンドラ施設としては使用されていませんが,倉庫や無料休憩所として活用され,今もその姿を残しています。






スキー場の各所には,かつて使用されていたゴンドラキャビンが点在しており,その姿を見るたびに少し残念な気持ちになります。

■路線

山頂付近は尾根沿いに建設されているため,素人目に見ても風に弱そうな地形であることが分かります。実際、地形的にも風の影響を受けやすい立地であり,こうした条件が運行面に与える影響の大きさもうかがえます。

写真中央右側はサンシャインリフトの山頂であり,現在の雫石スキー場のトップはこの地点となっています。第1ゴンドラはさらに高倉山の山頂へ向かって伸びており,現在は索道を利用して山頂から直接滑り出すことができない点が,少し悔やまれます。

■下部エリア

ゴンドラ下部は,木々が生い茂る森林の中を通っています。支柱周辺の樹木も成長し始めていますが,10年以上にわたって休止状態にあることを考えると,思ったよりも抑えられている印象もあり,ある程度の管理は行われているようにも感じられます。
ゴンドラ支柱の作業アームはかなり特徴的な構造です。

■中腹エリア
中腹部では尾根に沿ってメンズダウンヒルコースと並行する形でゴンドラが架かっています。上の写真は熊笹の滝です。



上の写真は天狗の踊り場


天狗の踊り場付近にある圧索支柱では,ワイヤロープが意図的に外された状態になっています。

■山頂エリア



サンシャインリフトから上のエリアは,狭い尾根の斜面に建設されており,防風ネットなども設置されていないため,吹きさらしの状態となっています。素人目に見てもかなり強引な設計だったことが伺えます。

■山頂駅




山頂駅は,折り返し設備のみを備えたコンパクトな建屋となっています。そして,高倉山の尾根筋に無理に建設されたこともあり,建物の一部が斜面側へ張り出した構造となっています。よくこれほど厳しい場所に建設したものだと,思わず感心してしまいます。(ポロっと落ちそう...)

1993年のアルペンスキー世界選手権大会では,スタート地点はこのゴンドラ山頂駅よりもさらに約100m上部に設けられており,当時はシュレップリフト(Jバー)がさらに上部まで架けられていました。

3. 第2ゴンドラ

■仕様
第2ゴンドラは,第1ゴンドラに隣接する山麓駅から小高倉山山頂へ向かって伸びる,全長3000mを超える長大路線です。安全索道製のゴンドラとしては,中間駅を持たない路線として国内最長級の規模を誇っていました。また,原動機出力は800kWに達する大出力路線のため,従来の安全索道製ゴンドラでは,ロープ径39mm程度まで対応するコンパクトな「S型グリップ」が主流でしたが,本路線ではロープ径48mmという大型ロープを採用したため、POMA社製の「TBDグリップ」が導入されました。第1ゴンドラもまだ稼働していた2000年代前半の時点でも,一般営業はすでに週末中心となっていたようです。


上の写真は、参考用として掲載したTBDグリップです。大きなコイルばねを備えた構造が特徴となっています。

■山麓駅
第1ゴンドラとは対照的に,第2ゴンドラの駅舎はクリーム色を基調としたデザインとなっています。屋根も片流れ形状が採用されており,平成初期のコクド系スキー場施設らしい雰囲気を色濃く感じさせます。また,第1ゴンドラが休止となった後は,第2ゴンドラが「雫石ゴンドラ」の名称を引き継ぐ形となりました。

第2ゴンドラ奥の駐車場だったスペースは太陽光発電の設備として活用されています。
かつては多くのスキーヤーや世界選手権を訪れた選手たちで賑わっていたゴンドラの入口も,現在では静けさに包まれています。

■路線

ディースダウンヒルコースを滑走した際の写真は残っていないため,今回は山麓側から撮影した写真のみの紹介となります。ゴンドラのロープ径が42mmへ拡大されたこともあり,支柱自体も前世代の6人乗りゴンドラ時代(白馬岩岳ノアなど)より一回り大型化されています

■山頂駅
山頂は小高倉山山頂に位置しますが,第1ゴンドラよりもコース滑り出しは広く駅舎にも余裕がある印象です。最後の3連支柱は圧巻です。

4. その他の廃リフト

雫石スキー場には多くの廃リフトが残っていましたが,撤去が進み現在は2基のみ現存しています。

■ダウンヒル第1ロマンスA.B線
路線長は1,200mにも及び,ペアリフトとしてはかなりの長距離路線です。さらに,日本ケーブル製としては初期のパラレル式ペアリフトの一つでもあります。,休止からはすでに長い年月が経過しており,現在では設備の老朽化も目立つようになっています。支柱や搬器には風雪にさらされ続けた痕跡が色濃く残り,かつて多くのスキーヤーを運んでいた索道も,静かに時を止めたまま佇んでいます。その姿には,どこか痛々しさと同時に,往年のリゾートの記憶を今に伝える独特の魅力があります。





■ダウンヒル第2ロマンス
こちらも路線長1,000mを超える長大なペアリフトで,当時の雫石スキー場の広大さを物語る路線の一つでした。
現在ではワイヤや山麓停留所はすでに撤去されており,現地には一部の支柱と山頂側の原動・緊張設備のみが残されています。特に山頂駅跡には,かつてリフトが稼働していた頃の機械設備が今なお残り,静まり返ったゲレンデの中で独特の存在感を放っています。索条を失った支柱群が山肌に点在する様子からは,往年の索道の姿を想像することができ,廃索道ならではの寂しさを感じさせます。

5. さいごに

現在の雫石スキー場は,全盛期と比べると営業規模こそ縮小したものの,ゲレンデそのもののクオリティは現在でも一級品です。特に高速系のコースは滑走距離・斜度ともに素晴らしく,世界選手権開催地らしいポテンシャルを今なお感じることができます。また,麓のホテルである雫石プリンスホテルも比較的リーズナブルに宿泊できることが多く,リゾート滞在を気軽に楽しめる点も魅力です。周辺には小岩井農場など観光地もあり,スキーだけでなく旅行としても満足度の高いエリアとなっています。
一方で,東北の豪雪地帯というイメージに反して,雫石は意外と降雪量が極端に多い場所ではありません。タイミングによっては積雪不足となることもあるため,訪問するなら積雪が安定しやすい1月末から2月頃がおすすめです。往年の巨大リゾートの面影を感じながら,上質なゲレンデを楽しめる――それが現在の雫石スキー場の大きな魅力だと思います。いつの日か新しいゴンドラが山を駆け上がる姿を見られることを期待したいところです。

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